中国ROKAEと代理店契約を締結、SIer事業の方針を大幅転換/IDECファクトリーソリューションズ
会社の動き 2025/07/15

協働ロボットに特化したシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のIDECファクトリーソリューションズ(愛知県一宮市、藤木勝敏社長)が、SIer事業の大幅な方針転換に乗り出した。従来は多様なメーカーの協働ロボットを使用して自動化システムを構築していたが、昨年11月に中国の産業用ロボットメーカーの珞石機器人(ROKAE<ロッケー>)の販売代理店となったのを機に、ROKAEの協働ロボットを拡販するプロジェクトチームを発足。中小企業の人手不足の課題解決に向け、今後はチーム全体でROKAEの協働ロボットの普及に努める構えだ。

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中小企業向けに協働ロボットを

中小企業の人手不足の課題を協働ロボットで解決したい――。

IDECファクトリーソリューションズがこうした思いを原動力に今年度から本格的に展開するのが、中国のROKAEの協働ロボットを拡販するプロジェクトチーム「ROCEY TEAM(ロッキーチーム)」だ。

IDECファクトリーソリューションズはROKAEの日本法人、ROKAE精機(東京都港区、王少飛社長)と昨年11月に販売代理店契約を締結し、ROKAEの協働ロボットの国内販売に乗り出した。

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IDECファクトリーソリューションズが販売代理店を務めるROKAEの協働ロボット

ROKAEは2015年の創業で、中国の山東省に本社を構える新興ロボットメーカー。産業用ロボットの製造から始まり、19年には協働ロボット市場にも進出した。現在は可搬質量3kg~5kgの「SR-Cシリーズ」と、同7kg~45kgの「CR-Cシリーズ」の2種類の協働ロボットをラインアップする。「SR-Cシリーズはサービス用途、CR-Cシリーズは製造現場など産業用途を想定している」とIDECファクトリーソリューションズの武仲清貴取締役最高執行責任者(COO)は話す。

全軸に力覚センサー

ROKAEの協働ロボットの大きな特徴は、両シリーズとも全軸に力覚センサーを標準搭載する点だ。安全性が高い上に、歯車のはめ合いや精密研磨といった高度なアプリケーション(応用的な使い方)にも対応できる。また、軌跡精度や位置決め精度などロボットの制御技術の高さにも強みを持つ。

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サービス用途の「SR-Cシリーズ」、産業用途の「CR-Cシリーズ」

減速機やモーターといった主要構成部品は自社の厳しい設計基準を満たした物だけを中国内で調達しており、両シリーズを高品質かつ低コストで販売できるという。「ROKAEの協働ロボットはハイエンドな領域を狙っており、100万円以下で購入できる中国製の安価な協働ロボットとはすみ分けが明確だ。また、全軸に力覚センサーを搭載した欧州や日本のハイエンドな協働ロボットと比べるとコストパフォーマンスが高い」と武仲取締役COOは強調する。

6つのカテゴリーで高く評価

IDECファクトリーソリューションズはROKAE精機の販売代理店となったのを機に、16年から展開するSIer事業の方針を大幅に転換した。従来は協働ロボットに特化したSIerとして、多様なメーカーの協働ロボットを使用しながら顧客のニーズを満たす自動化システムを構築してきた。

SIer事業のターゲットには当初から中小企業を据えていたが、自動化システムの導入費用の高さなどから大手企業向けの案件が多かったという。また、協働ロボットは簡単に操作でき、産業用ロボットと比べて少ない工数で自動化システムが構築できるため、生産技術力が高い大手企業向けの案件だとSIer独自の付加価値が生み出しにくいとの課題もあった。

中小企業に協働ロボットを本格的に普及させるには――。この問題に対してIDECファクトリーソリューションズが導き出した答えは、SIerとして多様な協働ロボットを扱うのではなく、販売代理店として特定の協働ロボットにリソースを集中させることだった。そして、約2年の検討期間を経てROKAEに候補を絞った。もともとは特定のメーカーの協働ロボットへの依存を避ける目的でロボットメーカーの販売代理店にならない方針を掲げていたが、昨年11月にROKAE精機と販売代理店契約を結んだ。

武仲取締役COOは「安全性、機能性、操作性、精度、デザイン、価格の6つのカテゴリーで高く評価した。ROKAEの協働ロボットなら中小企業に導入しても高い費用対効果が期待できる」と述べる。

チームで普及へ

IDECファクトリーソリューションズはSIerとして培ったノウハウや、IDECグループが得意とする安全対策のノウハウを生かし、金属加工会社を中心とした中小企業への提案を加速させる構えだ。溶接やマシンテンディング(工作機械などに加工物を着脱する作業)、パレタイジング(段ボール箱を積み付ける作業)の自動化を見据えたパッケージシステムも拡充し、中小企業が協働ロボットをより導入しやすくなる基盤も強化する。

しかし、中小企業と一口に言っても裾野が広いため、IDECファクトリーソリューションズだけでは全ての需要に対応できない。そのため、今年4月にはロッキーチームを発足し、複数の商社やSIerと連携してROKAEの協働ロボットをより広く普及させる体制も築いた。

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ROKAEの協働ロボットを使用したマシンテンディング向けのパッケージシステム

IDECファクトリーソリューションズは販売代理店としてパートナーの商社やSIerにROKAEの協働ロボットを安値で卸したり、技術教育や安全対策などの各種サポートを提供したりしながら、中小企業の人手不足の課題にチーム全体で応える。

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今年4月に名古屋市内で開催された展示会でもROKAEの協働ロボットをアピール

武仲取締役COOは「SIer事業の方針転換はわが社にとっても大きなチャレンジで、『これでダメなら撤退する』との強い覚悟で臨む。まだまだロッキーチームのPRが不十分なため、今年度は仕込みの時期と捉えて展示会出展やウェブページの拡充などの販促活動に力を注ぐ。27年度にはROKAEの協働ロボットで8億円、30年度には15億円の売り上げを達成したい」と意気込む。


原文は https://www.robot-digest.com/newarticle/?id=1750996354-293897

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)


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